「嵐の群像ー団塊世代の今」
 (2000年、河出書房新社刊、1800円)

 平和な戦後の申し子として生まれ、日本の高度経済成長を支えた団塊の世代が、90年代の長期不況の中で、想像を超える困難な事態に直面しているが、そうした時代背景の中で、50代で転職という人生の岐路に立たされた数十人のサラリーマンの本音と素顔に迫ったノンフィクション。

 「おやじがせつない」「おやじに元気がない」といわれるが、かつての企業戦士がリストラされる姿は確かにせつない。娘が学校でいじめられるからと失業を告げられず、出勤するふりをしてハローワークを巡り歩く電機会社課長の手帳には、これまで不合格になった会社が32社も並ぶ。

 中近東を飛び回っていた元商社マンも離婚を機に退職に追い込まれ、何度かの転職の末、現在は失業中。でも、いつか会えるだろうと信じる娘の、将来の結婚費用にと互助会で月6千円の積み立てだけは欠かすことがない。サラリーマンの日常の、小さけれど、切実な人生のドラマの数々を綴りながら、団塊世代や社会が直面する諸問題を浮き彫りにしている。

 「どんな逆境に陥ろうと、決して弱音を吐くことなく、淡々と現実に立ち向かう彼らの姿が印象的だ。高齢化社会に群をなして突入する団塊の世代が、当分、日本のキーパーソンであり続けることに間違いない。団塊世代のおやじにスポットをあてた現代を読み解く意欲作」(2000年11月30日付日刊ゲンダイから抜粋)とも紹介された。

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